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「ふぅー、まぁ怒るのも当然だからな、」
私のイラ立ちを心なしか鎮めるように、彼がひと息を吐いて、ごく落ち着いた口ぶりで話すと、
「だが助けてもらったことには、感謝してる。なので、改めて謝らせてほしい」
テーブルに両手を付き、真摯に頭を垂れてきた。
「……助けたつもりなんて、私には別に……」
ここに来る前にも謝られたけれど、再び率直に頭が下げられたことで、さっきまでの軽い調子とは裏腹なギャップ感に、自らの胸の内に沸き上がっていた感情の高ぶりが、にわかにレベルダウンするのを感じていると、
「おまえ、それにしてもよく食べるな?」
不意に、彼がそんなことを口に出した。
「……えっ」
ふと見れば、ケーキのお皿が三枚もカラになっていて、いつの間にか食べ過ぎていたことに、今さらながらに気づいた。
「……あっ、あのだって、なんでも食べていいって言われたし、ここのスイーツがどれもとっても美味しくて、ついあれもこれもって……」
急な気恥ずかしさに見舞われ、顔をうつむける。
「いや、いいよ別に。そういうの、可愛いなと思ってな」
不意打ちの『可愛い』の一言に、カーッと赤面するのを感じて、私はテーブルの下に隠れそうなくらいに、さらに顔をうつむけた。
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