1 ミステリアスな彼との出会い

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黙々とコーヒーカップを口に運ぶ姿に、 「あの、私……言いすぎちゃいましたよね」 構わないとは言われたものの、実際彼の気分を害してしまったようにも感じて、その表情をつと上目に見やった。 「……いいと言っただろ。そういうのは、聞き慣れてるんだよ。後継者の(さが)のようなものだから、おまえが気にすることは何もない」 (本当に、いいのかな……。けどまた、おまえって呼ばれたよね……) 心の中で悶々と思っていたら、そう言えば自分の名前をまだ知らせていなかったことにはたと気づいた。 名前を告げようとして、一瞬どうしようかとためらい、テーブルの上の名刺に改めて目を落とす。 (……彼の話ぶりからしても、言ってることはどうやらウソではないみたいだし、この名刺が本物なら身元もちゃんとしてるんだから、教えても大丈夫かな……) 突拍子もない出会いだったこともあって、私は頭をぐるぐると巡らせた末に、持っていた自分の名刺を彼に差し出すことにした──。
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