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「……お、わっ……!」
思わぬ反撃に、バランスを崩しかけたその男が、驚いたようにこちらを見やるが、
「……突然に抱きつくなんて、どういうことですか⁉」
私だって、到底黙ってはいられなかった。
声を大にして、憤然と相手の顔を睨みつけた──のだったが、その思いがけないイケメンぶりに、またしても目を奪われてしまった。
まさかのしかめた顔まで、悩ましげでそそられるみたいで……って、そ、そそられるって、もう~どういうことよ?
頭の中には、『ただしイケメンに限る』……なんていうワードが浮かび、違うんだってば! と、再び一人ツッコミを入れていると、
「……っと、もういなくなったみたいだな」
ふと、その人が一言を呟いて、
「……いなくなった、って……?」
怒りやら羞恥やらでないまぜになっていた気持ちが一気に吹き飛んで、あ然とさせられた。
「そういえば、いきなり付き合わせてしまって、まだ謝っていなかったな、」
意味がわからず立ちすくむ私に、相手はことも無げにそう口にすると、
「申し訳ない」
あっさりと頭を下げてきた。
「……あ、ああ、いえ……」
あまりに唐突に素直に謝られて、つい許してしまいそうにもなったけれど、
「ちょっと追われていてな。ああでもしないと、逃げ切れなかったんだ……」
続けざまにそんなことを告げられて、
「はぁ?」
と、心ならずも呆れた声が口をついた。
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