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「行こうか」
食事を終えテーブルを立つと、彼からすかさず手が差し出され、胸がドキリとする。
「……手なんて、別に……」と、言いよどんで、曇りがちな顔をうつむける。
「いいから、こういう場では男のエスコートもマナーだからな」
そうさらりと口にして、彼が私の手を掴む。
……手が、熱い。
どうして、こんな恋人みたいなこと……それがマナーだからと言ったって、手を繋ぐなんて……。だけど、そのなんのためらいもない仕草は、まるで意識すらされていないようにも感じられて……。
……この人にとっては、女性をエスコートするのも、当然なだけなのかもしれない……。
そう思い、繋がれた手にじっと目をやると、ギュッと胸が締め付けられるのを覚えた──。
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