1099人が本棚に入れています
本棚に追加
店を出てしばらくすると、その場限りでしかなかったように自然と手が離され、
「あそこのフレンチは、間違いがなかっただろう?」
ああいう場には行き慣れているんだろう、自分自身とはやはり疎外感のある調子で、そう尋ねられた。
「ああ、はい……、ごちそうさまでした」
さっきまで繋がれていた手を、ぼんやりと見下ろして答える。
「そうか、よかったよ」
口の端に、緩く笑みを浮かべるその顔を見つめながら、
仄かに熱をはらんだ手を、もう片方の自分の手でそっと隠すように覆うと、
「美味しかったです、本当にとっても……」
私は、もう一度同じようにも口にして、彼にぎこちなく微笑って返した。
最初のコメントを投稿しよう!