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「綺麗だな、似合うよ。海みたいなブルーの色合いが、おまえのイメージにぴったりだと思ったんだ」
お店を出て、改めて彼の方から告げられ、
「……はい、ありがとうございます……」
お礼を伝えはするものの、私自身のイメージに合わせて買ってくれたことに、ますます申し訳なさが募るようにも感じる。
「……あんまり気に入らなかったのか? 俺が選んだのは……」
「いえ、違います……。そうではなくて……」
彼を不愉快にさせてしまったかもしれなくて、うなだれるしかない思いでいると、
「ほら、こっち見てみろ、レオ」
少し先を行っていた彼がそう口にして、私はうつむき加減だった顔を上げた。
すると彼は、両手の人差し指と親指でフレームの形を作り、こちらへ向けていた。
「写真撮るから、笑えって、レオ」
「笑えって、レオって。私レオじゃないからって、そう言ったでしょ……」
この場をどう取りつくろえばいいのかがわからず、裏腹にむっつりとすることしかできなくて、つい口ごたえをする。
「ムッとしてるその顔、撮られたくなければ、笑ってみろって」
「もう、ムッとなんてしてないし、笑うことぐらいできるもの!」
乗せられていることは大概わかっていたけれど、いつまでも気まずさを抱えているよりは、気持ちを上向かせようとしてくれている彼に、いっそ自分も乗ってしまいたかった。
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