1 ミステリアスな彼との出会い

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「……。……えーっと、追われていたって、どういうことですか?」 やっぱりまずい人に関わっちゃったんだろうかと思いつつ、恐る恐る尋ねた。 「ああいや、それは置いといて。とりあえずのお礼はきちんとするから、いっしょに行こうか?」 「置いと……!」──置いとくの⁉ と、上げかけた反言(はんごん)も終わらない内に、ふいに手が引っ張っられて、 「ちょっと! お礼ってどこでするんですか? それに私、まだ行くとも言ってないですから!」 両足を踏ん張り連れて行かれるのを阻止し、たまりかねて言い返すと、 向こうは信じられないといった顔つきで、私を振り返って、 「……何だ、お詫びはいらないのか?」 大概に的はずれなことを口にした。 「……そういうことじゃなくて、」 「だったらいいだろ。行くぞ」 「いえ、だから……」 「これから帰るところみたいだし、他に予定もないんだろ?」 「ないと言えば、ないですが……」 なんだか口惜しい気持ちで、ボソボソと答えると、 「じゃあ、いいよな」 同意を得たとばかりに、再び手が引かれ、初めからそうだったけれど、どうにも相手のペースに押し切られっぱなしでと思う。 ただ、彼自身にはそれほど悪気があるようにも感じられず、私は半ば仕方のない気持ちでついて行くことにした──。
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