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「その笑顔、しっかりとここに、記憶しといたから」
自分の胸の辺りを親指で指し示す彼に、今日何度目かになる『ズルい』を感じる。
そういうこと、サラッと言えてしまって、しかもちっともハズしてないんだもの……。
「それと、そのアクセサリーだが、」
ふと彼が、私のネックレスを指差して、口を開いた。
「突然で、気おくれをしたんだろう? おまえと会うのもだが、俺はなんでも突然で、悪いな。だからもしよければなんだが、それは次に会える約束の印しとして、もらってくれないか」
「えっ……」……彼が私の胸の内を察して、とりなそうとしてくれていることがありありと知れる。
「……嫌か?」
頭に片手を当てた彼から、心もとなさげに尋ねられ、
首を小さく振って応えた。
身に余るものではあるけれど、もしまた会える約束の印しになるなら、大切に持っていられたらとも感じた。
「じゃあ、それに誓って、また会おうな、レオ!」
「はい、また……」
彼に応えて、ペンダントトップにふっと手を添えると、本当にまた会えたらいいなという、淡い期待に包まれた──。
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