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1 彼と一緒にいるその女性は、誰⁉
彼に会えたらという想いは、日を追うごとに強くなった。
そうして、デートの日から半月ぐらいは、わくわくとして次はいつ会えるかなという期待に満ちていた。
けれど、やがて何も起こり得ないまま一ヶ月が過ぎ、次第にそんな期待感も削がれると、私には彼と会う術は実はまるで残されていなかったことに、今さらのように気づかされた。
彼のことが唯一記された、最初に会った時にもらった名刺には、プライベートな連絡先などはあるはずもなく、ましてや二度の機会がありながら、電話番号どころか住んでいる所さえも教えてもらってはいなかった。
やっぱり、その場限りの出会いでしかなかったのかな……。
だから、連絡先のやり取りなんかもなくて……。
気持ちが募れば募るほど、逆にネガティブなモードに、いくら抑え込もうとしても蝕まれていくようにすら感じる。
(”このネックレスに誓って──”なんて、言ってたのに……)──あの日から、願掛けのようにずっとつけていたペンダントトップを片手に掴む。
彼に会う手立てもまるでなく、過ぎていくだけの日々の中で、
いつか会えたらという想いとは裏腹に、いつしかもう会えないのではという感情ばかりが、内心では膨らんでいきつつあった。
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