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そうして、やり場のない切なさを、日毎に噛み締める内、
もう彼とは会えないのなら、偶然の出会いもデートも、全部が夢だったんだと片付けてしまおうという感情に、次第に占められていった。
それくらい自分自身にとっては、どうにもならない現実が、ただただ苦しくて辛くてたまらなかった。
あれほどの人とほんのいっときだって夢を見れたのなら、それでいいじゃない……。
連絡の取り用も一切わからなくて、わかっているのは名前だけで……。それじゃあこっちから動けることなんて、どうあがいてもあるわけがないんだから……。
だからきっと、忘れてしまった方がいい──。
その方が気持ち的にもラクなんだからと、私はそう思い至って、彼のことを記憶の底へ無理やりに押し込もうとした。
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