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「あの……それ、じゃあ……」
いたたまれなくなり、その場から離れようとする。
「待ってくれ。せっかく会えたんだ、すぐには行かないでほしい」
「……。……ですが、今日は眞宮さんには、お相手の方がいらっしゃるようなので……」
引き止められはしても、およそ心持ちは上がらずに、やんわりと断ろうとすると、
「相手、か……」と、彼が一言を呟いて、ふと女性の方を見やった。
視線が交わされると、にっこりとしとやかな笑みを浮かべる女性に、自分には柄にもない奥ゆかしさが漂うようで、彼にはやっぱり彼女のような人がいかにも相応しく感じられた……。
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