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「そう、ですか……」
とは、女性は応じたものの、
あまり肯定的に受け入れているようには窺えなくて、
「今日は、やはり彼女さんとの約束を、優先された方がいいのでは……」
私自身も見るに見かねて、苦言を投げかけると、
「ああ、彼女ではないんだ」
彼が、そうあっさりと否定をした。
「えっ……」と、思わず声が詰まる。
彼女じゃなければ、一体どういう関係で──。
もしかして、以前に彼が話していた、『──強行に会わされそうにもなった女性』というのが、この人のことなんだろうか……。
ますますふくれ上がる疑問に、「だけど……、」と、口を開きかけるも、その女性の方が、「そろそろ、」と、先に切り出したことで、自分は口をつぐんだ。
「そろそろ、お話をしてもらわないと、私も困ります」
女性が微かに眉間にしわを寄せ、不快感を示すようにも告げる。
「わかっている。いずれ話はちゃんとするから、待ってもらえないか」
私にはまるで何のことかはわからないまま、彼が至って真剣な面持ちでそう言うと、
「……わかりました。では、次こそはきちんとしてくださいね」
彼女はそれ以上は言いつのらずに引き下がり、背を向けて歩き去ってしまった。
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