1 彼と一緒にいるその女性は、誰⁉

7/15
前へ
/77ページ
次へ
「そう、ですか……」 とは、女性は応じたものの、 あまり肯定的に受け入れているようには窺えなくて、 「今日は、やはり彼女さんとの約束を、優先された方がいいのでは……」 私自身も見るに見かねて、苦言を投げかけると、 「ああ、彼女ではないんだ」 彼が、そうあっさりと否定をした。 「えっ……」と、思わず声が詰まる。 彼女じゃなければ、一体どういう関係で──。 もしかして、以前に彼が話していた、『──強行に会わされそうにもなった女性』というのが、この人のことなんだろうか……。 ますますふくれ上がる疑問に、「だけど……、」と、口を開きかけるも、その女性の方が、「そろそろ、」と、先に切り出したことで、自分は口をつぐんだ。 「そろそろ、お話をしてもらわないと、私も困ります」 女性が微かに眉間にしわを寄せ、不快感を示すようにも告げる。 「わかっている。いずれ話はちゃんとするから、待ってもらえないか」 私にはまるで何のことかはわからないまま、彼が至って真剣な(おも)()ちでそう言うと、 「……わかりました。では、次こそはきちんとしてくださいね」 彼女はそれ以上は言いつのらずに引き下がり、背を向けて歩き去ってしまった。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1108人が本棚に入れています
本棚に追加