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──運ばれて来たケーキを一口食べて、その蕩けそうな口当たりに、一瞬フォークが止まらなくなりそうにもなったけれど、
「……。……あの、良ければどういうことだったのか、そろそろ教えてもらえませんか?」
やっぱり悶々と頭に渦巻いている不信さは、そう簡単には拭い切れなくて、意を決して尋ねてみた。
「ああ……言わなきゃダメなのか?」
コーヒーカップを手に、口ごもる彼に、
「言ってくれないと、こっちもモヤモヤして納得がいかないので」
と、あくまで食い下がった。
「そうかー……」
すると、ため息混じりに返して、
「振った女に追いかけられていたって言ったら、信じる?」
私の目をじっと見つめ、そう問いかけてきて、そのむやみな軽薄さに面食らった。
「……信じる、って……。それが真実なのかも、私にはわからないですし……」
どういうつもりで、そんなことを訊いてきてるんだろうかと勘ぐる。
彼の言ってることが、嘘だったとして、嘘をつく意味は? あるいはそれが真実だとして、なんでわざわざ『信じる?』だなんて、ダメ押しで確かめてくるんだろう……。
そう思うと、頭の中はより混乱して、ますます翻弄されているように思えるばかりだった──。
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