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「見えるのかー……」
自分から言い出したのにも関わらず、大げさにため息を吐いて見せると、
「まぁいいか。そっちがそんな風に見えるって言うなら、そういうことにしておいても」
次にはあっけらかんと、そう言ってのけた。
「いや、ちょっと待ってください。そう見えるならって、実際それが本当のことなんですか?」
尚も、反論を試みるも、
「君が信じたんだから、それでいいだろう」
それで問題なしとばかりに、そこで話を終わらせようとした。
「良くないですよ、ちっとも! 私なんか、突然に抱かれ……たのに……」
ヒートアップしてまくし立てたのはいいけれど、喋っている内に急にまた恥ずかしさが襲ってきて、語気は尻すぼみになった。
「……いや何ていうか、ああしないと目くらましもできなかったからな」
「……ああしないとって、目くらましって……、だから、どういうわけでなんですか?」
「それは、置いとくって、そう言っただろ」
いくら問い詰めても、肝心なことはまるではぐらかされてしまい、いい加減しゃくにさわって、
「ではもう、とりあえずは言うとおりに置いときますから……。……ただ、だからって、見ず知らずの私に突然にあんなことをしなくても、よかったんじゃないかと思うんですけど」
これだけは否が応でも言い渡しておかなきゃという気持ちで、苦言を投げかけた。
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