虹

　金曜日の夜、男は転勤の挨拶に女の家を訪れた。
　折からの雨は止みそうもない。
　女は男が雨宿りしながら泊っていくことを見越しているようである。
　手慣れたように男に夕食を出す。
　会社から転勤を命じられるや男は女に連絡し、今宵訪問することを告げてあった。
　男が訪れるのは、ほとんど金曜日の夜なのだが、毎回雨が降る。
　女の祈りが天に通じているかのようである。
　そして雨は土曜日も降り続ける。
　ふたりは別れを惜しみあう。
　次いつ再会できるか分からないだけに惜しみあう。
　日曜日の朝、雨が上がった。
　朝食を終え、帰宅する男を女は見送る。

　見上げる空に　虹が輝く