水たまりの怪物

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水たまりの怪物

「雨上がりの水たまりには気をつけて」 親友の柚月(ゆづき)が神妙な面持ちで囁いた。 小学校からの帰り道。 確かに近くには小さな水たまりがあった。 「いきなりどうしたの?」 「お母さんが言ってたの。最近、 子供が行方不明になる事件が増えてるって」 「へー。それと水たまりと何か関係があるの?」 「実はね、この学校にはある 女子児童が通っていたんだけど、ある雨の日、 殺されちゃったんだって。その子のお母さんは 悲しみのあまり川に飛び込んで 自殺しちゃったらしいのよ。それから、 この学校でね、出るんだって」 「出るって何が? ユーレイ?」 柚月は真面目な顔で頷いた。 「ユーレイっていうより怪物みたいらしいけど、 水たまりに近づいたら、突然足を引っ張られて 水たまりの中に消えてっちゃうらしいの。 怪物は死んだ自分の子供を探してるんだって。」 「ふぅん」 柚月はオカルト系の話が好きなので、 またいつものかと軽く流す。 水たまりに怪物なんているはずがない。 「もうっ花音(かのん) 全然信じてないでしょーっ!」 「だってー。水たまりって。 マンホールとかならわかるけどさー」 私の家の前に着いたので二人とも立ち止まる。 「でも、気をつけておいた方がいいよ。 五年二組のありさちゃんも行方不明だし」 たしかに…。 ありさちゃんは一週間前に行方不明になった。 ニュースでも報道されてたし、 ありさちゃんのお母さんと お父さんは大丈夫だろうか。 「そうだね、気をつけるよ」 柚月と別れ、家の中へ入る。 見られている気がして 振り返ったけど誰もいなかった。
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