雨上がりの水たまりには

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雨上がりの水たまりには

おかしいな。柚月と連絡がつかない。 私は雨上がりで水たまりがあちらこちらにある 帰り道を歩いていた。 『お母さんが言ってたの。最近、 子供が行方不明になる事件が増えてるって』 柚月の言葉が蘇り、不安になる。 電話も繋がらないし、大丈夫かな。 「まさか、水たまりの怪物が?」 いやいやまさか。 そんなはずない。 そう、柚月は風邪で寝込んでるんだ。 だからスマホが見れないんだ。 そう思ったら不安が和らいだ。 ポチャン。 あ、右足が水たまりに浸かってしまった。 靴の中まで水が入って気持ち悪い。 早く帰って靴を脱ぎたい。 右足を動かす。 あれ? 動かない。 足が、固まってしまったみたいに動かない。 まさか、本当に水たまりの怪物? いやいやいや。 冷や汗がドッと噴き出す。 『ネェ…アナタ…ワタシノコ…?』 「ひっ」 水たまりの中を見て血の気が引いた。 行方不明のはずのありさちゃんと柚月が 黒い物体に無数の目がついた怪物に 突き刺さっていたからだ。 いや、違う。 突き刺さっているんじゃない。 吸収されてるんだ。 「や、やめて!  わ、わたしはあなたの子供じゃないっ!」 右足がどんどん沈んでいく。 『アァ…ワタシノ…カワイイ…コ…』 「誰かっ!! たすけ」 誰もいなくなった住宅街に一人の少女の 声が霧散した。 皆さんも雨上がりの水たまりにはお気をつけて。 (終わり)
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