黒い絵

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 意識を取り戻した時、私は病院のベッドの上で眠っていた。医師の話によれば、滅多に人が立ち入らないような森の中で倒れているのを発見され、数ヵ月間昏睡状態だったという。  一体何が起きて現在に至るのか、理解が追い付かないことだらけだが、一つだけ分かっていることがある。それはあの洋館での悪夢は事実であるということだ。  卑しくも私は物書きの端くれ。このことは世間に公表しなければならない。その思いに駆られて新聞、ネットとあらゆるメディア媒体に文章を投稿したが、世間の反応は(いた)く冷酷なものであった。  私の体験した悪夢を”よく出来た創作”と嘲笑(ちょうしょう)されたり、売名行為目的の狂人と痛罵(つうば)される始末だった。  このような仕打ちに精神的に大きなダメージを負い、絶望した私はこんな世間から逃れることにした。  だが、どうせ隠遁(いんとん)するなら相応の環境の方がいい。  あの洋館のような……。                              〈完〉
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