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鬱蒼とした道無き道を進むと、そこには断崖絶壁の海岸に辿り着く。そこには古びた洋館がポツンと建っていた。
フリーライターの私は何気なく地図アプリを操作していて偶然この場所を見つけた。興味本位と言ってしまえばそれまでだが、そこに何があるのか気になってしまい、こうして現地に足を運んだ次第である。
洋館は長年放置されていたのか、所々雑草が生い茂り、壁の一部が無残に剥がれ落ちている箇所も見られた。
恐る恐る中に入ってみると、驚くことに内部は明らかに人の手が入っており、気品ある人物でも住んでいるかのような生活感が感じられた。
長い廊下を進んで行くと、ある部屋の扉前だけ灯りが灯っていた。扉に耳を接して聞き耳を立てると何か物音が聞こえた、と同時に、
「誰かいるのだろう。臆せず入って来るがいい」
と低い男性の声が響いた。
「は、はいっ」
思わず頓狂な声を上げてゆっくりと扉を開けると、部屋の中心に大きな円卓があり、その奥の席に一人の老人が座っていた。
テーブル上に置かれた燭台の灯だけだった為、全体的に部屋は薄暗く、老人だけが辛うじて認識出来る程度だった。
細雪が積もったような白髪と萎れた植物の如きしわしわの形相はどこか恐ろしく感じられた。
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