黄色い雨が上がったら

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 僕たちは、空を見上げる。  隣の相棒の語ることは、とても魅力的に聞こえたけれど。……でも、ロケットのない僕らの星にとっては、到底実現しないことだと思った。 「生まれる時から、人間は綺麗じゃん。ほら、赤ちゃんって言うだろ。ほっぺた赤くて、燃えるように熱くて。ルビーみたいに美麗だし。」 「うん。」 「怪我したら、血が出る。こういうのが普段から体内を巡って、栄養とか酸素とか届けてくれてんだろーなって思ったら、メッチャありがたく思える。これも、綺麗な赤色してる。鮮烈だ。」 「うん。」 「燃える炎の周りで乱舞してみ?こんな盛り上がることってないぜ。みんな目の色まで焔の色にゆらゆらして輝いて、赤い情熱ジャンジャン燃やす。尊い、貴い、情熱の美しさってやつだ。」 「うん。」  ロケット。  それは宇宙商業を営む一部の星人が所有するもの。  開発と製造には莫大な投資が必要なので、『いる』と判断した星以外は作らないのが常識だ。  ……だから。 「赤色……マジ、綺麗なのになあ。」  黄色い雨を見ながら、相棒はまたしても深々とため息を吐く。  ……でも。  そう、ロケットを飛ばして、別の星のの星人を連れ帰ることも。おーいと呼びかけて、夜騎士星人たちからこっちに来てもらうことも。  基本、不可能なことなのだ。 「はーあぁ……。」  相棒も、そのくらいはわかっているのだろう。  むしゃり。  ただ、右手で取った赤りんごをかじって、咀嚼して、呑み込んで。そしてそのままゴロンと後ろに倒れると、寝そべって目を瞑った。  不貞寝モードに入ってしまった相棒は、どうやらもう、何も言うことはないらしい。  僕はそんな相棒の代わりに、じっと雨を見上げた。  ……雨って、透明なものだよな。  よく考えると、おかしい。割と本気で、僕は思い悩み始めた。  目の前で起こっている現象について。  “黄色い雨”  雨っていうものは透明で。  だからこそ、赤色に染まって見えることはあっても。  それ単体で他の色に見えることなんて————ありえない。
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