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「黄色いね。」
「うん。レモン色の雨だ。」
「マジ意味わかんない。ウケるんだけど。」
本当に、お手本みたいに黄色い色の雨だった。
タンポポや、バナナや、絵に描かれたお月様のような鮮やかな色の雨。
この世界の名前は、紅星。
だいたいのものが赤い色に染まっている世界で、住人はみんな赤いものが好きで。大地も空も、獣も草花も、多くが赤いものばかり。
そんな世界に……なぜか、“黄色い雨”が降っている。
つまり。
この世界は、赤と黄でできている。
現時点では、そういうことだった。
僕は隣に座る相棒に向かって、語りかける。
「どうしたんだろうね。どっかの星の……ほら、夜騎士星人とかが、環境汚染でもしたとかかな。それで、黄色い雨がこの星まで流れ着いちゃった、みたいな。」
「いやあ、夜騎士星人は、戦争はするけど環境汚染はしないっしょ。」
「ああ……確かに。」
僕らは、紅い切り株に腰を下ろして、赤りんごを物色しながら会話に興じる。
長い赤髪の綺麗な相棒は、黄色い雨を眺めながら、深々とため息を吐いた。
「歪な奴らだよねえ。うちらみたいにわかりやすく生きればいいのに。」
「……それは無理じゃないかな。僕ら、赤いもの食べてればあとはなんでもいいっていう哲学で生きるだろう。でもほら、夜騎士星って、黒か青か紫あたりの食べ物しか存在しないんじゃなかったっけ。」
「あー、あそこ、暗闇ばっかだしなあ。あれじゃ、赤いものも黒く見える。論外だね。」
相棒は、そっと宙へ手を伸ばす。
そして、少しだけ、寂しそうに言った。
「夜の世界で戦うのもいいけどさ、あいつらにも、赤いものの美しさを知ってほしいな。」
「気持ちはわかるけど。でも、どうやって?」
「そりゃ、お招きするに決まってんじゃんか。うちらの星に。」
「紅星に?」
「もちのろん。」
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