遠い空から

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 舞は悩んでいた。明日は結婚式だが、そんな日にあいにくの雨だ。ジューンブライド、つまり6月の結婚式を行うと一生幸せな結婚生活を送れるとされているから、この月に考えた。だが、この時期は梅雨だ。どうしてこの時期に盛ってきたのかと不安になった。だが、この時期がいいと互いの親が決めていた。 「うーん・・・」 「どうした? 明日は晴れ舞台なのに」  そこに、舞の父、正之(まさゆき)がやって来た。当然、正之もその結婚式に参加する。正之も天気が気になっていた。週間予報の頃から、この日は雨が降ると言われてきたが、まさか本当に降るとは。梅雨だからしょうがないと思っているが、受け入れないと。 「明日は雨の予報なんだ」 「本当だ。今は梅雨の時期だからね」  だが、決まった以上、明日は結婚式だ。人生最良の日だから、楽しみでいてほしい。だが、こんな雨の予報で、本当に嬉しく思うんだろうか? 正之は心配だ。 「だからこんな時に結婚式は・・・」 「ジューンブライドだよ、ジューンブライド」  正之はジューンブライドを気にしてるいる。みんなで決めた事だ。 「それでも・・・」 「もう決まった事なんだし、そうしなさい」  正之は舞の肩を叩いた。だが、舞はちっとも元気にならない。 「はい・・・」  正之は部屋を出ていった。舞は全く気にせず、雨の降っている外を見ていた。 「はぁ・・・お母さん・・・」 「残念だったな。見れなくて。だけど、天国で見守ってくれるはずだよ」  正之が舞の横やって来た。舞の母は、1か月ぐらい前に交通事故で亡くなった。今日の結婚式の事を楽しみにしていたのに。どうしてこんなに突然、死んでしまうんだろう。交通事故の原因は、高齢者ドライバーのブレーキとアクセルの踏み間違えだったという。 「そうね。おやすみ」 「おやすみ」  正之は部屋を出ていった。舞はそんな正之を後ろから見ている。 「寝るか・・・」  舞は寝る事にした。明日は早い。しっかりと寝て、明日に備えよう。  その夜の事、舞は夢を見た。そこは天国だ。どうして天国にいる夢を見るんだろう。まさか、母の夢だろうか?  と、舞の目の前にロングヘアーの女性がいる。母だ。まさか、母と再会するとは。 「お母さん?」 「舞、結婚おめでとう」  母は舞を抱きしめた。あのときと同じ温もりだ。とても懐かしい。 「ありがとう」 「ここまで育ってくれて、ありがとうね」  母はここまで育ってくれた枚に感謝していた。だが、本当はもっと生きたかった。結婚式に行きたかった。孫が見たかった。もっと一緒に暮らしたかった。なのに、突然の出来事でかなわなかった。こんな事になって、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。 「これからも、天国から見守っていてね」 「うん」  そして、母は光の中に消えていった。舞はじっと見ている。これからきっと幸せになるよ。だから、見守っていてね。  舞は目を覚ました。いよいよ今日は結婚式だ。あいにくの雨の予報だけど、きっとそれは母の涙雨だと思って、晴れ舞台に臨もう。 「夢か・・・」  やっぱり夢だったようだ。会えなくてがっかりだけど、きっと天国で見守っているんだと思うと、少し前向きになれた。  舞はカーテンを開けた。外は晴れている。まだ水たまりが所々にある、雨上がりの朝だ。予報では雨だったのに、晴れるとは。 「あれっ、晴れてる」 「おはよう、いよいよ今日だね」  舞は振り向いた。正之だ。予報とは違い、晴れだったので、正之も嬉しそうだ。 「今日は雨だと思ってたのに、晴れだね」 「うん。天気予報でも、晴れになってるよ」  正之は今朝の天気予報を見た。晴れだと知って、驚いた。まるで、舞の門出を祝っているようだ。 「本当?」 「うん。昨日の予報は何だったんだろうね」  と、舞は外を見た。すると、虹が広がっている。今さっきはなかったのに。どうしたんだろう。正之も虹を見つけた。しばらく2人はそれを見守っている。 「うーん・・・。あっ、虹が出ている!」 「本当だ! きれいだね」  2人は感動した。これも、舞の門出を祝っているような奇跡だ。  ふと、舞は思った。もしかして、今日の晴れや虹は、天国の母が起こした奇跡だろうか?そう思うと、とても嬉しくなった。 「まさか、お母さんが奇跡を起こしてくれた?」 「そうかもしれない」  正之も納得した。見えないけれど、きっと母も結婚を祝っているだろうな。 「お母さん、ありがとう・・・」  もうこの世にはいないけれど、お母さん、ありがとう。今日から私、幸せになるから、ずっとずっと見守っていてね。
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