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「やっとお会いできた…。」
「え?」
「目の前に命の恩人がいるんですから、凄く緊張していますよ。
担当医から詳細を聞きましたし、あの時に少し意識があったんですよ、俺。」
「え!?」
(あの時って…応急処置をしていた時?)
「あの時に瑠璃さんの声が俺の中で届いていたんです。
瑠璃さんのお陰で、今こうして生きていられるんですから、感謝してもしきれません。
命を救って頂き、本当にありがとうございました。」
「いえ…そんな…。」
「あの応急処置はどこで覚えたんですか?」
その質問に少し間を空けて答えた。
「盲目での救急対応講座に通ってたんです。
1年前に両親と私が乗っていた車が飲酒運転の車と激突して、事故を起こしたんです。
私は重症で意識があったんですけど、両親を助ける事が出来ずに亡くなってしまったから。」
「あ……本当にすまない。
知らなかったとはいえ、辛い事を思い出させてしまって。」
「いえ、いいんです。
こちらこそすみません。
余計な事を。」
「……もしかして、近くに仏壇とかある?」
「はい。隣の部屋に。」
「お線香…あげてもいいかな?」
「え…?ありがとうございます。」
と言って隣の部屋まで案内して、凪は仏壇の前で正座し、お線香を香炉に立ててから合掌した。
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