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終えると凪は、近くに瑠璃の両親の写真立てを見つめた。
「ご両親…優しそうな方だ。」
「ええ、そうなんです。生まれつきの盲目の私を支えて育ててくれて…自慢の両親でした。目が見えない代わりに人一倍に耳が良いんです。
なので今は録音タイピストの職に就いたんです。」
「耳が良い……じゃあ、もしかしてあそこにあるピアノも瑠璃さんの?」
「……ピアノはもうかれこれ1年は弾いていませんから腕が錆びてますよ。」
「そうか…。聞きたかったな…。瑠璃さんの演奏。」
その後、再度茶の間に戻り、凪から話を切り出した。
「そうだ。是非ともお礼をさせて頂きたい。
もし後日、何処かお時間がありましたら、一緒に出かけたいのですが…どうかな?」
「え…それって…。」
「勿論お礼としての意味だけど、命の恩人として君の事をもっと知りたいんだ。」
(あ…そういう…。)
凪の顔は見えないが、なんだかじっと見られている様な気がして落ち着かない瑠璃だった。
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