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09 クロエ、口淫を説く※
「………っふ…んん、」
ちゅこちゅこと竿を扱きながら先端を舐めると、ギデロンの凶暴な分身も硬度を増してきた。しかし、増したのは硬さだけではなく、今やどちらが攻めているのか分からないぐらい雄は私の口内を圧迫している。
異物が喉奥を突こうと侵入するたび、私は込み上げる嗚咽をなんとか堪えた。口淫とはこんなに拷問的な時間だっただろうか?
元婚約者であるライアスとそうした行為を行うのは、私の体調が悪いなどで彼の相手が務まらない時だった。いつもの性交に比べたらわりと楽だったし、顔を見なくて良いから緊張もしなかった。
だけど、ギデオンの場合は違う。
「クロエ……そのまま顔を上げて」
「………んぅ…?」
「あぁ、綺麗だ……ありがとう」
一心不乱に肉棒を鎮めようと格闘する姿のいったいどこに美徳を感じるのかは謎だけど、魔王は大層この口淫がお気に召したようで。
上手く出来ているかは置いておいて、私自身も奉仕する間に頭を撫でてくれる大きな手に、悪い気はしなかった。押さえ付けられると苦しいものの、彼はそんなことはしない。
唾液を絡ませてなんとか向き合うこと数十分。
「っはぁ、ヤバい……出そうだ」
ギデオンが困ったようにそう言った。
とうとう吐精するのね、という安心感から気を抜いたのかもしれない。安堵の気持ちで再び鈴口を舐め始めた私の頭が、魔王の両手で包まれた。
耳まですっぽり包まれて、音が遠退く。
抗議のために開いた口に深々と雄が刺さった。
「んむっ……!?」
そのまま激しい抽挿が始まって、もう会話どころではなくなった。精を出すための乱暴な腰振りに付き合いながら、まるで自分が感情のないダッチワイフになったような気持ちになる。だって、こんなの、あんまりだ。
目の奥がツンとした。
帰りたい。本能的にそう思ってしまった。
「クロエ……あぁ、クロエ…っく……!」
ビクッと一際大きく跳ねた肉の塊は私の口内で爆発し、勢いよく白い精を吐き出した。呆然と開いた唇からボタボタと欲望は溢れてシーツに染みを作る。
私はただ虚ろな目でギデオンを見上げた。
酷いじゃない、と言ってやりたくて。
「………クロエ…?」
驚いたように魔王は目を大きく見開く。
「……っうぅ、」
息を吸おうとして、私は初めて自分が泣いていることに気付いた。次から次へと込み上げる涙が頬を伝って流れ落ちる。閨の教育中に泣き出すなんて、我ながら何事だろう。
悲しいわけではないと思う。
だけど、涙が止まらない。
「怖がらせてしまってすまない…悪かった」
ギデオンは私を抱き締めて背中を撫でる。
そうして落ち着かせてくれようとしているのに、私は何故か自分を立て直すことが出来なかった。指導者として失格ではあると理解しているけど、私はこの時恐怖を感じていたのだ。
自分を丁重に扱ってくれる魔王もまた、ただの雄に過ぎないことを知った。自分が気持ち良くなるためには私のことを道具のように扱うのだと分かった。
大きな手は何度も背中を往復する。
だけど、もう、優しさを感じることは出来ない。
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