18 クロエ、閨指導を再開する※

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18 クロエ、閨指導を再開する※

 私の熱は結局三日ほど続き、その間はギデオンが毎夜様子を見に来てくれた。  高熱のためにうなされながら見る悪夢の中でも、何処からか私の名前を呼ぶ優しい声があった気がして、目覚めてもそれほど恐ろしくはなかった。  寝込んでいる間は食事もままならず、閨教育どころではなかったので、彼には申し訳ないことをしたと思う。夢うつつの状態で謝罪をした記憶はあるけれど、魔王がなんと答えたかまでは覚えていない。 「ん~!やっぱりゆっくりとお風呂に入れば生き返るわ。この薔薇の香りも最近好きになってきたの」  素直な感想を伝えれば、バグバグも嬉しそうに頷く。 「そう言っていただけて光栄です。青薔薇の特殊なオイルは纏う女性のフェロモンを高める効能がありますので」 「フェロモン……?」  聞き返すとバグバグは鳩首をビクッとさせて慌てたように両手をブンブンさせる。私が視線を外さずに見つめ続けると、ついに観念したように小さな声で語り始めた。  どうやら、風呂に混ぜられていたオイルは彼女のお節介で、女性の身体からフェロモンを出す働きがあるらしい。「これは教育が上手くいくようにという使用人一同の願いからです!」という言葉通り、ギデオンの指示ではなさそうだ。  私はしっとりとした自分の肌を観察しながら、ふふっと笑い声を溢した。バグバグが怯えた顔を上げる。 「ありがとうね。あなた達の気持ち、嬉しい」 「………クロエ様?」 「私も正直夜伽なんて柄じゃないから、緊張したり、不安だったりするの。だけど、こういう小さなサポートで魔王様がその気になってくれたら、もちろん助かるわ」  まだ初期段階の閨教育は私にとって心配の種でもある。  進みが遅いのは指導者である私の手際が悪いからであって、口淫の際に取り乱して泣いたりしなければ、もう結合まで持っていくことは出来ていただろう。  いざ本番となって、ギデオンがピエドラ王女の前で恥を掛ないためにも、私は教育者としての仕事を全うすべきだ。  薄い化粧を施した上で美しく髪を巻いてくれたバグバグが部屋から出て行くのと入れ替わりで、夜着に着替えた魔王が部屋へ入って来た。心臓がドクッと跳ね上がる。 「クロエ、もう体調は大丈夫か?」  ギデオンはそう言ってソファに座る私の顔を覗いた。  黄色い瞳がとろっと溶けて流れ込んできそうだ。 「大丈夫です。ご心配をお掛けして申し訳ありません」 「いや……良いんだ。それで、その……」 「閨の指導を再開しましょう。私はそのために居ますから」  立ち尽くすギデオンの手を取って自分の胸元へ導く。  前にこうして向き合って自分を曝け出した時よりも、気持ちは落ち着いていた。この孤独で優し過ぎる王の助けになりたいと思ったし、彼にならば触れられても良いと感じたからかもしれない。 「魔王様、触れてください」  柔らかな双丘のカーブに沿って押し付けたギデオンの手がピクリと動いた。指先が胸の先端を掠める。 「………っん、」  小さく息が漏れる。  恥ずかしくて俯いた顔が持ち上げられ、口付けられた。  熱が出た夜に重ねた柔らかな唇を思い出しながらなんとか応戦していたけれど、容易に押し倒された身体がシーツに沈むと、また沸々と緊張の波が高まった。 「あっ、んぅ……ッ…ふぅ、」  ギデオンは私の口の中を舌で確認するようになぞりながら、右手でそろりそろりと胸を揉みしだく。形を変える白い肉の中心で、控えめな飾りが痛いほどに硬くなっているのには気付いていた。 「どうしたんだ、クロエ?切ない声を出して」 「……っ、ここにも触れてください…」 「こうか?人間の女はどこも柔らかいな」 「んんっ……!」  首筋に息を吹きかけらて、思わず身体が跳ねる。  浮いた腰を押さえ付けるように手を添えると、ギデオンはツンと張った突起を指先でクリクリと扱いた。ナイトドレスの薄布と擦れてなんとも言えない快感が立ち上り、私はまたビクビクと震えてしまう。  縋るように魔王の瞳を見つめる。  どちらからともなく、また唇が重なった。
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