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47 クロエ、思いを伝える※
噛んで、引っ掻いて、掴んで突いて。
それでその怒りが消えてくれるならと。
「………っ…クロエ、まだだ、まだ…」
「ん、あぁっ」
何度も意識を手放しそうになるのに、腰を支えられたままでは横になることも出来ない。額から流れて来た汗の滴が目に入って沁みた。どれぐらい時間が経ったのだろう。
私を掻き抱くことで彼の中に溜まった鬱憤が発散されるならば良い。噛み付くことで、表せない気持ちがスッキリするならば喜んで身体を差し出す。私が泣いたら征服欲でも満たされるならば、そんなのいつだって。
「ギデオン……、」
それなのにどうして、魔王は悲しい顔をするのか。
埋まるどころかどんどん穴は深まるようで、身体を重ねれば重ねるほどギデオンは苦しそうだった。収まらない熱を持て余して、うなされるようにまた擦り始める。
「んぁ、いや、もう奥むりぃ…ッ」
「嘘を言うな、こんなに引き絞って、」
ぐずぐずの蜜穴を容赦なく掘られれば、また簡単に私は達してしまう。
「あっ、あぁ、ギデオン……ああっ」
「まだ人間臭い。この品のない下着は王子の趣味か?」
役目を果たしていないショーツを私の足首から抜き取って魔王は嘲るように嗤った。
見たことがない、こんな風に嗤う男ではなかったはずなのに。彼はもっと温かくて、城の皆のことを愛して、私の部屋の中ではいつも萎縮したように気を遣っていて。
「だんまりか。まぁ良い、今日はこっちも楽しませてもらおう。上品な王族はさすがに手を出していないだろうから」
「………っな、ギデオン…!?」
「なんだ?今更止めるわけにいかない」
分かるだろ、と言いながら大きな手が尻の上を這う。
卑猥な音を立てて絡め取った蜜をまだ経験のない小さな穴に塗りたくる。上品も何も、こんな場所を使うのは適切ではない。尻の穴なんて一部の変態が嗜むだけで、素人が手を出して良い場所では……
「あぅっ、あ、いや……ッ…お願い、やだっ!」
出すだけの穴に指先が沈められた。
それは何とも言いがたい感覚で、冷や汗が流れる。
「まだキツいな。これでは俺が入ったら裂けそうだ」
「………え?」
「博識のお前のことだ、知っているだろう?今はまだ狭いこの小さな穴でも性交は出来る。もう少し解そうか」
そう言って唇を舐めると、魔王の頭が身体にグッと近付いた。熱くほてった秘所に他人の息遣いを感じる。
ざらりざらりと舌先はカーブした肌の上を這って、やがて小さな穴に到達した。逃げ惑う脚は両手に捕まり、初めての異物の侵入に脳が警報を鳴らしているのが分かった。
「ダメ……っ、やめて、ダメなの!ギデオン…!」
「どうして?」
「汚いから、そんなとこ舐めたら、」
「それは理由にならないな」
愉しそうに舌先で穴を舐めていると思えば、柔肌を押さえていたギデオンの右手が既に準備が出来ている前の穴に飲まれた。グチュグチュとそのまま緩やかに動かされると、まるで身体の内側から撫でられているみたいで。
「っあ、あぁ、待って!」
「待たない」
「今それしちゃ、イっ……あぁっ」
足の指まで電流が流れたように痺れて情けなく果てた。
透明な潮がシーツを汚していく。
余韻に浸る間もなく、まだぼんやりとした身体を抱き起こされる。魔王の膝の上に座らされて口付けに応えていると、ふいに尻の下に違和感を感じた。
(え?まさか………)
確認しようと首を捻ろうとしたところをズンッと突き上げられて、私は文字通り自分が裂けて二つに割れたのだと思った。それぐらいに痛かった。内臓がいくつか破裂したのではないか、もしくは臓物を引き摺りながらこの悪魔は侵入を深めているのではないかと。
「……っ、いたい、いや…!」
「その程度か」
「………え?」
「お前は本当に自分が俺の子を産めると思っているのか?覚悟があるか?クロエ……死ぬかもしれないんだぞ」
震える声に顔を上げたら、魔王もこちらを見ていた。
私はこの目を知っている。
バグバグやクジャータの正体を知ってしまった時、部屋に私を連れ込んだ彼はこんな顔をしていた。不安を滲ませた声で、何かに怯えるみたいに瞳を揺らして。
「ギデオン、私の死を恐れていたの?」
「……人は脆いと聞いた」
「だから私のことを拒絶したの?聞かなかったことにするなんて言って、拒んだり……」
「俺はお前を利用したくなかった。魔族の血を繋ぐとか、子を産むためだけにお前の助けを借りるわけには、」
「ねぇ、助けじゃないの」
まだ俯いたままの銀色の髪を撫でてみる。
抱き締めると、慣れ親しんだ体温に溶けるようだ。
「聞いてね、ギデオン……私は単なる人助けで言ったわけじゃありません。あなたのことを好きだから、ずっと共に生きたいと思ったから、一緒になりたいと伝えたの」
満月の瞳を覗き込む。
大きく震えた目の奥で何かが弾けたように見えた。
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