05 クロエ、説明する1※

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05 クロエ、説明する1※

 ベッドの上に這い上がると、ギデオンも隣に腰掛けた。  何から説明したら良いのか分からないが、そもそも魔族と人間では身体の作りに違いがあるのかもしれないと考えたので、私は自分の身体の部位を説明することから始めようと口を開く。  先ほどから口数の減ったギデオンの瞳が自分の白い肌に釘付けであることは分かっていた。人間の女はそんなに珍しいのだろうか。それとも、何か彼を驚かすような欠点でも抱えていたのか。 「魔王様、先ずは身体の作りを説明します」 「………分かった」  ほわっと自分の胸を持ち上げる。  湯に浮かんだ薔薇の香りがした気がした。 「この二つの肉の塊が……胸です。乳房には優しく触れてください。パン生地を捏ねるように、柔らかく、」 「パン生地を捏ねたことがないんだが?」 「そうですか…あくまでも例えなので、」 「試しても良いか?」 「ええ、まぁ……」  小さく頷きながら、ギデオンの様子を盗み見る。  二本の角を生やした魔族の王はまるで子供のように興味津々な目で私の胸に顔を近付けた。頭の隅では「こんなことまで説明する必要があるのだろうか?」という疑問も浮かんでいた。種族が違えど、ギデオンの身体は角の有無を除けばほとんど人間と同じに見える。  大きな手が椀を包み込むように胸に触れた。  十八年間あまりクロエとして生きてきた私だけど、転生者であるゆえか、感情はいつも二分されていた。皆と話して笑い、悲しむクロエ・グレイハウンド。表で見せる感情の裏で、その奥に隠れた本当の私はどこか他人事のようにぼんやりしていたのだ。  そうやって、心の痛みを上手く逃していたのだと思う。  婚約破棄を申し渡されたあの夜も。  だけどどうだろう。今日は上手くいかない。 「………っん、」  やわやわと肉を揉みしだく手の動きに、くぐもった声が口から漏れる。それを見たギデオンは驚いたように手を離した。 「すまない。痛かったのか?パン生地を捏ねたことがないから加減が分からない」 「いえ、上手く出来ています。今のは痛いわけではなく…その……つまり、気持ちが良いということです」 「なるほど。理解した」  魔王は堅い顔でひとつ頷いて見せる。  続いて私は胸の先端部分の説明に入り、人間の女は快感を覚えると乳頭が硬くなると伝えると、ギデオンは「ほう」と愉しそうな顔をした。 「この部分もパン生地と同様に?」 「あ……そうですね、ここは個人差はありますが…パン生地というよりも弾くように刺激したり、先をつねったりすると喜ばれる場合もあります」 「やってみたい。こちらを向いてくれ」  私はそろりと魔王に向き直る。  真剣な彼の表情を見て、私はこれがあくまでも教育の一環であることを再認識した。恥じずに真面目に応じなければ。  ギデオンの手が再び私の双丘の上に置かれて、右手で不器用に胸の突起を弾いた。ぎこきちない動きが意図せず快感を与えて私は目をぎゅっと瞑る。 「クロエ、どうだろう?上手く出来ているか?」 「んっ、はい、上手に……っ」  そう答えた瞬間、添えるだけだった左手がクリクリと先端を捻った。思わず大きな声を上げて私は仰け反る。 「あっ……!?」  じわりと何かが股から漏れ出るのを感じて赤面した。ギデオンはまたもやオロオロと困ったように私を見る。  閨の指導者である立場の私が、生徒である彼の前で取り乱すわけにはいかない。私は「何でもありません」と答えて、粗相の跡を隠すように太腿を擦り合わせた。 「魔王様は習得が早いですね。これではあっという間に私が教えることは無くなりそうです」 「そうか?褒められると悪い気はしない。人間の身体は随分と繊細なんだな。魔族であれば、この程度の触れ合いどうってことないと思うんだが」 「……左様でいらっしゃいますか」  いったい魔族はどれだけ激しい突き合いをするんだ。  夜伽相手ということで、いずれは自分も彼を受け入れることになるのだと思うけれど、私はその日が来るのを密かに恐ろしく思った。
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