当て馬だって恋してる

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「とりあえずシャワー浴びてこいよ。ずぶ濡れのままじゃ風邪ひくだろ」 浴室のドア越しに声をかける。返事は無かったが風呂場のドアの閉開音だけは聞こえたので、素直に従ってはくれたようだとほんの少し安堵する。 脱衣所にバスタオルと着替え代わりのシャツを置いておき、濡れた制服は取り敢えず袋に入れて一つに纏めて置いといた。 つい先週まで彼氏が出来たのだと嬉しそうに話していたばかりだというのに一体どうしたというのだろう? ローテーブルにココアを2つ準備しながら先ほどの出来事を思い出す。 まさかもう喧嘩でもしたんだろうか? 美咲は少し我儘な所があるからあり得ない話ではない。それとも他に何かあったのか?  誰かに虐められているとか? まぁ、どちらにせよあんな状態の美咲を放っておく訳にはいかない。少し落ち着いたら話を聞いてみよう。 それにしても、勢いで家に上げてしまったがこれで良かったんだろうか? 両親は共働きだから、夜遅くまでこの家には誰も戻ってこない。いくら幼稚園の頃からの幼馴染とはいえ、年頃の男女が二人きりで密室に居るという事実に変わりは無いわけで…… って、何考えてんだ俺は!? 相手はあの美咲だぞ!? そりゃまぁちょっとは可愛いとは思うけど! 胸だって他の子より大きい方だし! いやいやいやいやいや、俺は幼馴染相手に一体何を考えてる!? ぶんぶんと頭を振って雑念を払う。 でも、やっぱりもしかしたら……。って、思うじゃないか。さっきはビックリしすぎてそれどころじゃなかったけど。濡れたシャツから透けて見えたブラのラインが妙にエロかったな、とか。 しっとりと濡れた髪や服からなんだか凄くいい匂いがしたな、とか。 抱きしめた時の身体の柔らかさが今でも手に残ってるな、とか。 いやいやいやいや! 違うから! 俺は全然そんな気ないから!! 「……なに一人で壁に向かって話しかけてるの?」 「うぉわっ!?」 突然背後から声をかけられて変な声が出た。振り返ると俺が貸したTシャツを羽織った美咲が怪訝そうな顔でこちらを見ている。 やはり俺の服は少し大きかったのか、ダボっとしたシャツ一枚だけを身に着けていて、袖口からは指先だけがちょこんと出ている。シャツの裾から覗く白い肌が妙に艶めかしく、思わず視線が吸い寄せられた。
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