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「な、何よ。人のことジロジロ見て」
「い、いや……何でもない」
慌てて視線を逸らすが心臓はバクバクと早鐘を打っていた。落ち着け俺。相手はあの美咲だぞ? いやでもちょっとエロすぎじゃないか?
「大ちゃん?」
「な、なんだよ」
「シャワーありがとうね。あとシャツも……」
美咲は申し訳なさそうに俺を見上げてきた。シャワーを浴びて、大分落ち着いたのか顔色も普段通りに戻っているみたいだ。
「いいよ。濡れたままじゃ風邪ひくからな」
「うん……」
美咲は俺の顔を見ながら少し何か言いたげにしていたものの、結局それ以上は何も言ってこなかった。そのまま隣に腰を下ろすと俺の肩に頭を預けてくる。
ふわりと香るシャンプーの匂いに一瞬ドキっとしたものの、努めて冷静を装う。
「雨……まだやまないね」
窓の外を眺めながら呟くように言う美咲の言葉に釣られて俺も視線を向ける。雨のピークは越えたようだが、まだ当分止みそうにない。
「……なぁ、何があったか聞いてもいいか?……もしかして、例の彼氏と喧嘩でもしたのか?」
思い切って問いかけると、彼女は驚いた表情を浮かべた後すぐに悲しげに目を伏せてしまった。
その反応を見て、自分の予想が当たってしまったことに気付かされる。
「大ちゃんにはやっぱり、何でもわかっちゃうんだね……」
「そりゃまぁ、幼馴染だし。ずっと側で見てきたからな」
「……そっか」
再び訪れる沈黙。
降り注ぐ雨音がやけに大きく響いている気がする。
重苦しい分厚い雲から降り注ぐ暗い雨は、まるで今の彼女の心の中を表しているかのようだ。
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