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本当に可愛い奴だなと思うと同時に、胸の奥底から沸々と湧き上がってくるドス黒い感情。
だからと言って、自分の気持ちを伝える勇気もない。我ながら、染みついた当て馬根性からは中々抜けだせそうに無いらしい。
「……取り敢えずさ、二人きりになって嫌な事とか不安な事全部ぶちまけて来いよ。そんで、駄目ならダメでスッキリしてから次の恋探せばいいんじゃね? 」
自分で言っていて反吐が出そうだ。
自分の気持ちを隠して、相手が傷つかないようにと励ましているフリをして、心の奥底では彼女がフラれる事を望んでいる。これで本当に、彼女の事を心から応援していると言えるのだろうか。
いや、言えるわけがない。
でも、それでも俺は……。
この気持ちを彼女に悟られるわけにはいかないのだ。幼馴染と言うポジションが崩れて側にいられなくなるくらいなら、俺はずっとこのままでいい。
そう自分に言い聞かせて、俺は精一杯の笑顔を作ると美咲の頭をポンッと軽く叩いてやった。
「そう、だよね! 悩んでたって先に進めないよね。ありがと大ちゃん!」
俺の言葉に美咲は笑顔を取り戻し、早速明日の放課後にでも誘ってみるね。と言って立ち上がる。
「じゃ、私、帰るね。突然押しかけちゃってごめんね。それと、服もありがとう! 洗って返すから」
そう言って笑顔で手を振る彼女の表情は、いつもの明るいそれに戻っていた。
しとしとと降り続けていた雨はいつの間にか上がり、夕焼けの茜色が空を染め上げている。
エントランスのドアを開けて帰って行く彼女を見送って、俺は深く息を吐き出した。
遠ざかっていく足音を聞きながら、その場にズルズルと座り込む。
「……たく……」
これだから、雨は嫌いなんだ。いつもいつも嫌な事ばかり連れて来る。
アイツの幸せを誰よりも願っているはずなのに、彼女の恋が破れることを密かに願っている自分は本当に最低な奴だと思う。
報われない恋だと知っていながらも諦めきれない。
こんな恋、いっその事忘れてしまいたいのにそれも出来ない。
けれど、願わくばどうか……アイツだけは幸せに笑っていて欲しいと思う。
そんな事を思いながら見上げた空には、いつの間にか大きな虹が掛かっていたのだった――……。
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