同窓会

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同窓会

 同窓会は光瀬の集会所を借りて行われた。  広い座敷に座卓が置かれ、酒や料理が並べられていた。  車で迎えに来てくれた村上に連れられ、麻希が座敷に入ると皆が歓迎してくれた。 「わかる? 俺、石崎(いしざき)」 「麻希ちゃん、懐かしいなあ。美帆(みほ)だよ」 「やっぱり面影あるな。俺覚えてるか? 大作(だいさく)だ」  皆それぞれ挨拶してくれる。どの子も昔の面影があり、麻希は嬉しかった。 「麻希ちゃ──ん!」  後ろから声がして振り向くと、妊婦らしいゆったりしたジャンバースカートを着た女性が立っていた。 「咲良ちゃん!」  麻希はその妊婦に駆け寄った。一番仲良しだった咲良は、お腹が大きかった。  隣には夫の本田が立っていた。 「ええっ? 赤ちゃん生まれるの? おめでとう! 本田君と結婚したって村ちゃんに聞いたんだけど」 「うん。そうなの。今、八カ月なんだ」 「もうすぐだね! 咲良ちゃんがママだなんて、びっくりだよ」  麻希は咲良と抱き合って再会を喜んだ。離れていた年月が嘘のようだった。  同窓会は賑やかに進行した。  一人一人、改めて麻希の席に話しに来てくれたが、すぐに昔に戻ったように笑顔で話せた。  一通り皆と話して落ち着いた頃、思い切って麻希はバッグから写真を撮り出した。 「あの、これ、案内と一緒に送ってくれた写真なんだけどね」  周囲の人に見えるように差し出す。 「ああ、シゲマキが転校する日に先生が撮ってくれた集合写真だ」  麻希の左隣りの大作が言った。 「なになに、見せて」  遠くの席の子も麻希のまわりに集まって来る。 「麻希ちゃんのアメリカの住所がわからなくて送れなかったんだよね」  咲良が覗き込みながら言う。 「でね、ここ……」  麻希は黒塗りの子の所を指差す。 「これってどうして? この子誰?」  自分以外、見ても違和感を感じていない様子なのが不思議だった。 「誰って、ん? これ? 誰だっけ?」  大作の隣の石崎が写真を覗き込む。 「あ、あれじゃね? 親の離婚で転校した、木内(きうち)?」  咲良の隣の本田が言う。 「違うよ、木内君が転校したのは小三の時だもの」  麻希は否定する。 「じゃあ誰だっけ、ここにいたの?」  けれども本気で気にしているのは麻希だけで、黒く塗りつぶすという行為にも、それが誰かということにも、皆あまりというか全く関心がないようだ。  離れた席では、写真のことは忘れてまた盛り上がっている。  麻希は写真の子供を数える。 「十四人? ねえ、咲良ちゃん、私達のクラスって十四人だった?」 「え? 十三人でしょ」  咲良は当たり前のように言う。 「でも……」  麻希もそう思い込もうとしていた。しかし、黒塗りの子を入れたら十四人だ。そして……。 「私がいた頃は十四人だったんだよ」  そう麻希は確信していた。  麻希は昼間、校庭を見て思い出したのだ。体育で二人組になる時、いつもちょうどで誰もあぶれなかった。それは十四人だったからだ。  昨日、車の中で村上も十三人全員参加と言った。今も十三人しかいない。自分も最初は疑問を抱かなかった。でも──。 「ねえ、どうして? 私達、おかしいよ。十四人だよね? 私達の学年。ねえ、誰が来てないの? この黒塗りの子? なんで黒く塗ってるの?」  麻希が大声で問うと、その場がしんとした。
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