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ゴブリンが自滅した直後、背後に殺気を感じた。
振り向くと、湿原から姿を現したらしい大蛇が、鎌首をもたげている。
その頭は俺の背丈よりも頭三つ分くらい高い位置にある。
「うわあっ!」
大蛇が襲い掛かってきたので、俺は横っ飛びしてかわす。
俺を襲い損ねた大蛇は、勢い余って、そのまま湿原に突っ込む。
湿原の中に突入してしまった大蛇が、再び姿を現すことはなかった。
「ふう、危なかった。こんな所でのんびりしているわけにはいかない。さっさと町へ行こう」
長い湿原地帯を抜け、町に辿り着いた。
結構大きな町で、辺り一面に石畳が敷き詰められている。
建ち並ぶ建築物は、思いのほか色とりどりであり、石造りだったり、レンガ造りだったり、木造建築だったりで、持ち主の個性が表れていそうである。
俺がこの町に着いた時、真っ先にしたことがある。
それは、武器と防具の新調である。
俺は、より強くならなければならない。
なぜならば、魔王を倒すという使命があるからだ。
多くの犠牲者を出し、世界に恐怖と混乱をもたらした魔王。
必ず倒してみせる。
……と、その前に。
さすがに疲れたな。
宿に泊まって身を休めよう。
宿は王宮ほど豪華ではないものの、なかなか立派な造りで、食事も美味い。
そして、ベッドの上はふかふかで気持ちいい。
これからぐっすりと眠ろうと思った、その時――
ゴロゴロ……
雷鳴が外から聞こえてきた。
もしかしたら、雨が降るのではないかと思っていると、やっぱり、雨の音が聞こえてきた。ザーッという音がしており、本降りのようである。
「雨か。鬱陶しいな。出発する頃には止んでいるといいんだが……」
そうぼやいた後、俺は目を閉じた。
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