0人が本棚に入れています
本棚に追加
目が覚めた。
窓からは明るくも優しい光が差し込んでいる。朝が来たようだ。
こうして光が差し込んでいる様子を見ると、雨は既に止んだのだろう。
俺は朝食を取り、身支度を整え、宿を出る。
町中を見渡すと、水溜まりだらけだ。
あの音だと本降りだったようだし、当然のことだろう。
それでも、洪水にならなかったのは幸いである。
空を見ると、雲が所々にあるものの、晴れている。青空は美しく、太陽はまぶしい。
俺以外の人間も目を覚まし、いつも通りの生活を送っているようで、何人もの人々が町中を行き交っている。
目の前を一人の若い女性が通り過ぎる。
女性が進む先には、水溜まりがある。
ぴちゃっ。
女性は水溜まりを避けずに、踏み抜いた。
すると、どうだろう。
女性は水溜まり吸い込まれ、悲鳴を上げることなく、落ちるようにして消えてしまった。
「なっ!」
なんということだろう。町中でこんなことが起きていいのだろうか。町は基本的にやすらぎの場だぞ。しかも、人のくるぶしにも及ばない水溜まりで溺れるなんてことが、あるのだろうか。
「はっ!」
もしや、これも魔王の仕業だろうか。
魔王の力は神々にも匹敵するといわれているし、不思議ではないかもしれない。
「魔王め、絶対に許さん!」
最初のコメントを投稿しよう!