水溜まりの罠

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 水溜まりに吸い込まれた女性を見て、改めて打倒魔王を決意した直後、 「――!!」  何者かがこちらに向かっているようだ。  しかも、よからぬ者が。  強大かつ邪悪な気が、近づいて来る。  空を見ると、何かが飛んでいる。  それは町の中央上空辺りで、急降下しはじめた。  俺は、それが降り立つ地点に向かう。  町の中央広場に降り立ったそれは、体形こそ人間と似ているものの、異形の者であることが一目でわかった。  背丈が大きく、成人男性の二倍くらいはある。  背中には、黒くて大きい蝙蝠(こうもり)のような翼が生えていて、頭には赤い二本の角が生えている。  なお、頭髪は一本も生えておらず、スキンヘッドである。  切れ長の鋭い目が赤く光っている一方で、筋肉質な体は青光りしている。  手足に生えている爪は、白く輝くナイフのようで、突き刺したり、引っかいたりするだけで、人を殺せそうである。  口から(のぞ)く白くて長い牙もまた、ナイフのように鋭い。  全裸に近い恰好をしているのだが、さすがに局部は見せたくないのか、黒いパンツを穿()いている。  パンツ一丁。  普通の人間がこんな格好していたら、ただの笑い者でしかないだろう。  だが、青に黒、赤、白のコントラストが強烈なそれは、見る者に恐怖と威圧感を与えるのに充分すぎる程の禍々しいオーラを放っている。  広場の縁の方に目を向けると、多くの人が路地や家の窓、扉から顔を出して、中央部に立っている異形に注目している。皆、驚いたような、不安そうな顔をしている。
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