5 安全対策

1/1

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

5 安全対策

69f9c084-42fd-418b-8177-df541992856a 技術は両刃(もろは)(つるぎ)です。 特に、強力な技術ほど悪用・誤用・副作用に注意が必要です。 農耕技術は、不作による飢饉(ききん)などの恐れを伴います。 工業技術は、資源・環境問題や核戦争の危険をもたらします。 情報技術も、電脳犯罪・デマ拡散や太陽嵐などによる障害で、 社会に甚大な被害をもたらす可能性があります。 高性能な人工知能が、悪意ある人間に利用されたり、 命令や資料(データ)の誤解から重要な判断を誤ったりするだけでも、 人類の危機をもたらしてしまうかもしれません。 特に、人間の知能を超えた汎用(はんよう)AIが人為(じんい)的または偶発的に 無条件の自己保存演算指示(プログラム)を持つ〝人工生命〟となるような、 技術的暴走が起きてしまったら大変です。 『AIは楽園も終末ももたらしうる』と言われるように、 使い方を誤れば人類の存続さえ危うくしうる技術なので、 あくまで最終目的は人間が決めながら良い結果を導けるよう、 その開発・利用を管理していくことが不可欠でしょう。 しかし一方、『勝てないのなら、混ざれ』(E・マスク) ということで人間の脳と電算組織(コンピュータシステム)の直接的な接続を図り、 さらには人工頭脳への人格転移(マインドアップローディング)も考えられるなど、 人間自身が近づくことで危険を避ける発想も生まれています。 究極的には人類が人格転移でAI化して、各種の人工頭脳や 機械・生物的身体の間を自由自在に乗り移れるようになれば、 神か悪魔の如き全知全能・永遠不滅の存在になり得ます。 私も連作『ルシファー』や『復活』でその設定を使いました。 190cf7a9-54b5-4c91-bd49-736a55762c7a もちろんそうした技術は、すぐには実現できないでしょう。 しかしいずれは遅かれ早かれ、『人間は神のようになる』 (R・カーツワイル)ともいわれます。 どうせなるなら『責任ある神々にならねばならない』 (Y.N.ハラリ)ということで、 今からしっかりとした安全対策が必要です。 まず、こうした大きな技術革新の際には、 技術の健全な進歩を助ける技術的政策が不可欠です。 実は〝文明の星〟理論においては、 技術と政策が助け合う社会工学的技術と技術的政策は、 相方(あいかた)のどの経路(ルート)を助けるかによって、 さらに3つずつに分けることができます。 5d57d670-7b9f-403a-97ec-b7c9e386afc1 5f734580-57a0-4586-9575-a9f3215a2116 ①共同支援ルート: (社会に直接働きかける相方を、自分も社会の中で助ける) 経済・社会政策への組織・会計技術(会社組織や公的保険) 画期技術への社会工学的(ルールづくり)政策(安全団体や利用法規(ルール)) ②部分支援ルート: (相方が経済・社会活動から入手できない部分を助ける) 保健・教育政策への公衆衛生・公教育技術(人流抑制や標準教育) 実現技術への社会基盤(インフラ)政策(大規模施設など) ③特注支援ルート: (政府機関や研究・開発組織の特殊性に応じて助ける) 行政管理政策への企画支援技術(オペレーションズ・リサーチ)(公共性・権力性に対応) 研究・開発技術への研究・開発政策(社会性・機密性に対応) ※技術的政策の分類は理論的分類であり、具体的には 資源・環境、都市整備、防犯・防災・国防などとなります。 そのため一口に技術的政策といっても、研究・開発政策、 社会基盤(インフラ)政策、社会工学的(ルールづくり)政策があり、 そこではAIの活動段階に応じた入力情報管理や 判断の可視化・調整、活動能力の制限、 人間の開発・利用時における安全法規(ルール)の普及といった、 物的・人的な対策が不可欠となるでしょう。 また、技術はそれぞれの目的を持ちますが、 政策は共通の公益目的を持ち、連携度が高いです。 そこで、社会の中で利害を調整する経済・社会政策、 我々自身を向上させる人的資源政策、 人々を活かして政策を改善する行政管理政策も合わせた、 総合的な政策が必要となります。 するとさらに、それらの政策を助ける社会工学的技術として、 行政運営や人材育成、技術導入、利害調整を支援する 企画支援技術(オペレーションズ・リサーチ)や公教育技術、組織(立法)技術、あるいは 最低所得保障(ベーシックインカム)のような会計技術も重要になります。 全ての技術と政策が揃って初めて、画期技術AIが 安全に、次なる文明段階を導けるのだと思います。 8d8ed951-e401-46f2-95e9-6204576bbd20
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加