髪、首、切る

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髪、首、切る

 黒髪が歩いている。  間違えた……黒髪を頭の皮にくっつけた生き物の後ろ姿が見えた。依頼されるだけのことはある。  女性の本体は間違いなく髪の毛だろう。そこから下は植物で例えると植木鉢のようなものだ。実際にわたしも自分の髪の声を聞いたことがあったし。  肌つやだとか、プロポーションだとか、声が良いとかそんなオプションは必要ない。髪の毛が奇麗に育てば、どうでも良い。黒髪限定ではあるが。  素人はハサミで髪を切りたがる。玄人のわたしは日本刀でばっさりする。もちろん、それなりの技術が必要ではある。  一流のわたしが日本刀で切った髪は、オプションや植木鉢がなくても伸びていく。おそらく、太陽のエネルギーで光合成できるからだと思う。  今日の髪は……ちっ、赤く汚れてしまった。 「またか、今月だけで何人目だ」 「分かっているだけでも六人。手口も同じですし、例の殺人鬼で間違いないかと。やっぱり女性の顔によっぽど執着でも」 「考えたくもねーな。人間の頭を持ち帰る生き物の気持ちなんて」 「それにしても、今回も美人さんですね」 「そういう趣味なんだろう。ナニに利用をしているのやら」  今日も驚かれたな。わたしが美人だからか。  そんなことに驚く前に自分たちの悪趣味について考えるべきだと個人的には思う。  わたしは黒髪が好きなだけだ。  ネクロフィリアなんて……考えるだけで。  まあいいか、お金はくれるし。髪ももらえるし。  それにしても、いや我慢だ……我慢。  だと分かっていても、やはり切りたい。痛い。  あっ。 「で、どう思う?」 「どうもこうも、例の殺人鬼に間違いないかと……依頼をした男たちも白状してますし」 「そうなんだが、どうしてこうなるんだ」 「彼女に依頼をしていた連中によるといつもの発作が原因で」 「ギロチンじゃないんだ、自分でここまで奇麗に」 「それがですね。日本刀には一切……彼女の指紋がついてなかったんですよ」 「拭き取ったんだろう、彼女を殺した誰かが。この美人を遺体にしたかったやつもいたはずだし」 「じゃあ、(つか)に彼女の髪の毛を絡ませてあったのもなにかしらの」
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