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立ち上がると同時に腰に腕が回されて安堵の息が零れ、いつものようにソファに腰を下ろすと自らクッションの代わりになるように肘置きにクッションを置いてそこにリアムが背中を預けて慶一朗を手招きする。
鍛えられている逞しい胸板をクッション代わりに背中を預け、透明の袋をいつもよりは丁寧な手つきで開けて中のひとつを摘まむと、ほらと言いながら背後の口元に差し出す。
「……甘いけど、こんな苦い砂糖菓子食ったのは初めてだ」
背後から聞こえてくる感想が己の予想とは違い、砂糖菓子の中にどんな苦さがあるのかと訝りつつ同じようにひとつ口に放り込むと、口内にふわりとした甘さだけが広がっていく。
そのことから苦さを感じ取っているのは味覚ではなく心だと気付き、リアムに合図を送ってその身体の上で寝返りを打つと、愛嬌のある顔を見下ろすように胸板で頬杖を突く。
「ヘイ、優しい王子様」
「……うん」
「これが日本のものだとお前は知らなかった。そうだろう?」
「……うん」
「じゃあもうそれ以上気にするな」
もしも分かった上で俺に贈るつもりだったのなら単なる嫌がらせだろうが、そうではないことを知っているから大丈夫だと笑うとヘイゼルの双眸が見開かれた後、その顔がくしゃくしゃと笑み崩れていく。
「寛容な俺で良かったな」
「うん、そうだな……本当に感謝します、陛下」
「うむ」
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