雨上がりの景色

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 河原で感情に浸っていると玲はまた懲りずに滝の前に現れた。今度はなんだ?と内心うんざりしながらも滝は無視を決め込んだ。しかし玲はそんな滝のことなど気にもとめず話を続ける。 「……なぁ、おまえさ」 「……」 「なんでいつもそんなに辛気臭い顔してんの?」 「……っ!?」  “辛気臭い”というワードに思わず反応してしまうが、すぐに我に帰る。そしてまた無視をする滝に玲は大きなため息を吐いた。 「おまえって、わけわかんないよな。無視するほど嫌いな相手のことも気遣えるなんて、見上げたもんだよ」 「自分は別に気遣ってなんかいない」 「無視してんのにちょこちょこ言葉を返してくれるのに?今も私が少し躓きそうになったら体が反応してたぞ?いつでも手が出せるようにって感じには、な」  玲の言葉に滝は言い返せない。それは全て図星だからだった。  滝はよくつるむ仲間とは本音はぶつけ合わない。それくらいの関係でも心地よい。  それを知ったから、尚更、誰かに深く関わることは避けていた。  それなのに、だ。滝に対して玲はズケズケと関わってくる。ノックもなしに土足で人の心を荒らすような態度。  玲は玲の信念があってそうしていると理解はできる、けれど滝は求めていない。  だから…… 「勘違いだ。お前には関係ない」  滝が冷たく言い放つと玲は目を細めて怒った顔をした。 「……っ、なんだよその言い方!」  そして反射的に叫んでしまっていた。  そんな自分の態度に一番驚いたのは玲自身だった。驚いたように口元に手をやり、気まずそうに視線を泳がす。  確かに滝に無視されたのは面白くなかった。しかし特別親しい間柄でもない滝に声を荒げることは人としてどうなのかと玲も思う。  気まずい空気が二人の間に流れる。しかしそれを打ち消すように口を開いたのは滝の方だった。
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