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「もう自分に構うな。お前はお前の仲間とつるんでいればいいだろ」
滝は玲の方を見ずに言う。それが関の山だった。
「それはできない」
しかし、返ってきた言葉は意外にもきっぱりとしたものだった。驚いて振り返るとそこには真剣な表情をした玲がいた。
「出会いは最悪な形だったけど、それが滝を避ける理由にはならないし。それに私は借りは返す主義だからな。助けられっぱなしじゃ性に合わない」
玲の言葉は真っ直ぐ滝に向かう。そう、真っ直ぐすぎた。滝の心には眩しいくらいに。
「……俺は、求めてない」
今までで一番冷たい声で紡いだ言葉。玲の反応が見れなくて、滝は逃げるようにその場を去った。
滝の心の中は今も尚、土砂降りだ。決して己の罪を忘れぬように。己は咎人なのだと、自分に刻み込む。
***
ある日のことだった。それはまたしても偶然だった。玲が変な輩に絡まれているのを滝が発見した。
無視すればよかったのだろう。そのうち玲のお仲間が助けにくるはずだと、気にせず通り過ぎればよかったのだ。
「ーーっ、やめろ!」
しかし、それは無理だった。耳に入る抵抗する玲の声。滝にはそれが“助けて”と聞こえた気がしたからーー。
自然と体が動いていた。
玲を囲んでいる輩に蹴りを入れ、玲を引き寄せて背後に隠すように立つ。
「な!?てめぇ何しやがる!」
「いきなり出てきてなんだこいつ!?」
そんな輩の反応など無視をして、滝は淡々とした口調で話す。
「失せろ」
「……っ!こいつらやるぞ!ボコしてやれ!!」
その台詞を待ってましたと言わんばかりに男たちが一斉に飛びかかってくるが、滝は冷静に拳を振り上げて先頭の男をぶっ飛ばした。それに続くように迫りくる者を順々に倒していく。
「おまえ……」
玲はそんな滝の背中に目が釘付けになっていた。
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