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アレとは?
それが一番の謎なのよね。呪いのことも黙っていたわけじゃなくて、話そうとは考えてくれていた。でも何らかの理由で私が嫌う可能性があったから、相談できなかった?
うーん。うん、私に探偵の真似事は無理!
「ドミニク様。何を隠しているのですか? あと十秒以内に言わなかったら、話し合いの見込みなしと思って退席しますからね」
「っ!?」
眼光が更に鋭くなったけれど、そんなの怖くないわ。心の中で叫んでいるのがダダ漏れですもの。それに一瞬だけ泣きそうな顔を……うっ、しょぼんとした顔がちょっと可愛いなんて……思ってないわ。三年間も黙っていたのですから! 私は激オコなのです!
「十、九、八……」
「あ──」
「七、六、ごー、よん、さん、にー」
「──っ、急に数えるのが早くなってないか!?」
「いち、ぜ──」
「私は──結婚当日に、神獣の竜の始祖返りしたんだ!」
「え」
ボフン、と唐突な破裂音と共に旦那様の容姿に変化が訪れた。捻じ曲がった白い二本の角、白い肌が更に白く、頬には銀の鱗があり、白目部分が黒く染まって、瞳はエメラルドグリーン、太ももほどの蜥蜴のような尻尾がうねる。
どう見ても竜人族の特徴を色濃く受け継いでいた。
「まあ」
「──っ」
旦那様の顔がサーっと青ざめた。どうやら本人の意思とは関係なく本来の姿に戻ったようだった。
【や、やってしまった……! あれだけ感情を凍らせて、動揺や感情が揺れ動かないように特訓をしたというのに、妻の前ではまるでダメだ……。それでも三年は隠し通してきたのに……】
あら。尻尾がへにゃりと垂れ下がっているわ。なんだか犬の尻尾みたいで可愛いかも。
神獣の血は隔世遺伝することがままあり、この国の半分以上は神獣の血が巡っているらしい。昨今は神獣の血が薄れたとかで覚醒することはほとんどない。何より白銀の神獣が始祖返りする者は稀で、体の一部が獣に酷似する、または一時的に獣になれるなどの権能はあるけれど、外見は人と変わらないのだとか。
【……ああ、もう離縁しかない……。この姿はさぞかし気持ち悪いだろう】
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