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しかし神獣の血も薄れ番制度は廃止。その頃、貴族内の階級格差が開き親同士が勝手に婚姻を決めることが当たり前になっていた。その結果、政略結婚で離縁という逃げ道がないことで、暴力や流血沙汰が増えていったという。
決定打だったのは、神獣の始祖返りによる惨劇だった。
稀に成長過程から大人になって始祖返りする者がいるという。結婚後に神獣の始祖返りしたのだが、伴侶ではないと妻を拒絶。女性は心の病に、始祖返りした男は離縁ができないことに激昂。最終的に一家惨殺の事件があったことで、白い結婚が認められたのだ。
そんな背景もあって離縁が貴族にとって醜聞ではあるものの、表立って貶すなどの発言はタブーになっている。百年前に転生しなくて良かったわ。
浮気、DV、冷え切った家族関係を続けるよりも、お互いに幸せになる道があるのならそうすべきだと思う。前世での記憶と知識、価値観があることで私自身、離婚に対してそこまで悪印象はない。
貴族として生きていくなら確かにデメリットはあるかもしれないが、離縁した段階で私は市井に身を落とすつもりなので全く問題ない。むしろしがらみとか世間体を気にする息の詰まるような生き方よりずっと楽だもの。
商人として個人事業名義もあるので生きていく分には余裕もあるし。やっぱり私は家庭に入るよりも、バリバリ働くほうが合っているのだわ。それに出資しても良いという友人もいるのだ。うん、大丈夫よ。
そう結論づけて荷造りを侍女たちに任せた。
持ち物はドレスや宝石よりも蔵書の方が多く、思ったよりも時間が掛かりそうだわ。帰るのは実家ではなく、一階がお店、二階が居住空間となる一軒家だ。数日かけて持ち出す方がいいわね。幸いにも執事長のロータスは明日戻るのだから、それまでに何とかしてしまいましょう。
そう思っていたのだけれど、そう簡単にはいかなかった。
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