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離縁できるまで、あと六日ですわ旦那様。①
離縁できるまで残り六日。
な、なんてこと一日があっという間に過ぎてしまった。
その原因は、旦那様が引き留めた? ノン。そんなことは全くなかったわ。……ちょっと凹んだけれど。
昨日のうちに屋敷を出るはずだったのに誤算だったわ。料理長と私考案の新作デザートの話で盛り上がったせいで一日が潰れたのだ。味や見た目など研究心がくすぐられたのがいけない。
ここを出たら料理長と料理や菓子研究ができないと思ったら、つい。
旦那様──ドミニク様は、いつの間にか王城に仕事に向かったらしく、その日は帰ってこなかった。アッサリと離縁届にサインしてくれると思ったのに、どうしてこうなってしまったのかしら。
溜息を漏らしつつ、昨日中断した荷物作りをするように侍女たちに指示を出そうとしたところで、執事長のロータスが部屋に駆け込んできた。栗色の髪の老紳士である彼が全力で走っているのを初めて見たかも。
「奥様、事情は聞きましたが、どうか、お考え直しを!」
「ロータス。……今まで私の我が儘に付き合わせてしまってごめんなさい。でも、これで旦那様は好いた方を屋敷にお連れすることもできるのですから──」
「何をおっしゃっているのですか! 旦那様はあんなに奥様を愛しているのに、そんな相手などおりません! それよりも旦那様が再起不能で本日仕事もできないほどポンコツになってしまったのです!! どうにかもう一度、旦那様と話す機会を与えてくださいませんか!?」
「…………はい?」
旦那様が私を?
あんなに愛していた? そんな記憶はとんとございません……。
「ロータス」
「はい」
「私、いい目のお医者様がいないか商会経由で調べてみるわ」
「奥様、私の目は正常です。いいですか、旦那様の思い人は奥様なのです!」
そう言われてもこの三年間を思い返しても、旦那様がそれらしい行動をしたことなど見たことがない。
「ロータス。わかったわ」
「奥様!」
「幻聴が聞こえるのね。やっぱり私がいいお医者様を──」
「私はまだまだ現役でございます!」
「そうね。今後も旦那様を支えて貰わないと困るわ」
「……」
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