離縁できるまで、あと六日ですわ旦那様。①

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 美しい声で聞こえてくる声の嵐。  えええー!? か、可愛い!? 私が!?  ずっとそんな風に思っていたの!? 思わず頬に熱が集まって赤くなってしまう。恥ずかしさでいっぱいなのに、当の本人は眉一つ動いていない! この方の顔、鉄壁過ぎません!?  表情筋とか生きているのかしら? もしかして常に使っていないので、固くなってしまっている?  私も心の声に動揺して、思考がオカシな方向に傾いてしまう。 「失礼します」 「「!?」」  侍女が紅茶を淹れてから、一礼して下がった。芳醇な柑橘系の香りが鼻孔をくすぐる。私の好きなアールグレイの香りだわ。  ほんの少しだけ場の空気が和らいだ──気がする。私は一度思考をリセットするため、紅茶に口を付けて気持ちを落ち着かせる。いつも通り素晴らしい味わいに感動した。やっぱり茶葉の質が全然違う。 【彼女が好きだって言った紅茶は、やはり質が良い。それにしてもこのような形でお茶デートが実現するとは! あとでロータスに特別手当を出してやらねば!】  いやデートじゃない話し合いなのだけれど……。病院が必要だったのはロータスではなく、ドミニク様だったなんて……。  とりあえず、心の声でドミニク様の真意を聞き出すにはちょうど良いわ。傷つくことを言われる可能性もあるけれど、こっちは離縁する覚悟はできているもの。か、可愛いとか好きだって思われていたって、決意は揺らがないのですからね! 「ドミニク様、侍女の荷物整理が終わり次第屋敷を出て行きます。数ヵ月分の領地運営、屋敷内の雑務はすでに終わらせておりますので、後妻様の引き継ぎも完璧ですわ」 「…………」  ドミニク様は目を逸らすだけで何も言わない。何も言わないが──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】  心の中が台風のよう。まったくもって表情が死んでいるのだけれど、ギャップが可笑しいわ。そもそも後妻に心当たりがないなんて白々しい。 【私は妻以外興味が無いのに、どうして後妻? ……悲しい。辛い。仕事とかもうどうでもいいかな。繁忙期? 決算? そんなのもうどうでもいい。数字を追いかけていたら妻が逃げてしまう!! そんなのダメだ。私の心が死ぬ。……明日から有休消化しよう。国王に今までの借りをチャラにさせよう、そうしよう】  国王様にご迷惑が!?  話が大きくなっていません!? え、私がここで家を出たら財務課が立ち行かないとか……そんなことはな──。 「……まず私は離縁を望んでいない。そしてこの問題が解決するまで、仕事を休むことにした」 「え」
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