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侍女のモニカに昨夜の出来事を話すと、カップにお茶を注ぎながら声を弾ませる。
「ニーナ様は、フランツ様に恋をしているのですね」
その言葉で、一気に頬が熱くなった。
「で、でも、フランツ様には妹みたいなものだと……」
私はモニカに、図書館でのやり取りを伝える。
「そんな事が……。ですがそれは恐らく、何かお考えがあってフランツ様はそうおっしゃったのだと思います」
「そう、かしら?」
半信半疑で問う私に、モニカが強く頷いた。
「はい、ニーナ様。男性の言葉は、時に建前で誤魔化されるものなのです」
「それはどういう?」
座っている私に視線を合わせるようにしゃがみ込んで、モニカが話し出す。
「妹のような存在を、本当に妹としか思っていない確率は非常に低いという事です。あるいは……今現在は本当にそうであっても、簡単にその関係性は変わる事の方が多いと言う事です」
ギュッと手を握って真剣に説明してもらったのに、私はあまり理解できずに「は、はい」と曖昧な返事をする。
十八歳の私より六つ年上のモニカは、この城の庭師の男性と結婚している。私は社交会のデビュー前に屋敷に閉じ込められた事もあり、男性に出会う機会がなかった。こんな私にも、上手な恋ができるだろうか……。
「ニーナ様。これからはモニカが精一杯、お力になりますので」
頼れる人など誰もいなかった状況から、こんなに心強い味方ができた。
心からの感謝を込めて、「ありがとう」とモニカを見つめる。そんな私の顔を見たモニカが、また声を大きく弾ませた。
「フランツ様が驚かれたのも納得の、素敵な笑顔ですよ。ニーナ様!」
私はそんな言葉が嬉しくて、もう一度モニカを見て笑った。
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