217人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
*
モニカに手伝ってもらいドレスに着替える。
舞踏会用のドレスは、胸から上は肌が見えている胸のラインがハートカットになった艶のあるドレスだった。碧色の宝石がついたネックレスをつけ、髪をアップにまとめてもらう。耳にも、同じ碧色の石が輝いていた。
「今日の宝石は、フランツ様の瞳と同じ色ですね」
モニカの言葉に、フランツ様が側にいるような安心感が胸に広がる。
「ニーナ様、素敵ですよ。あちらの部屋でフランツ様がお待ちです。行きましょう」
衣装室を出ると、椅子に腰掛けていたフランツ様がこちらを見て立ち上がった。
フランツ様は普段、礼装用の軍服にアイスブルク家の家紋入りロングコートを羽織っている。けれど今は、最も格式の高い黒の燕尾服を着ていた。普段は下りている前髪をオールバックに流した髪型が、より瞳の碧を際立たせている。
なんて、凛々しく美しい方なのだろうと見惚れてしまう。そんな私を、フランツ様の瞳が見据えた。しばしの沈黙に、緊張で胸が張り裂けそうになる。
「ニーナ、綺麗だよ。目を奪われてしまった」
甘い低音の声が私の鼓膜を震わせ、胸まで響いてじんわり疼く。
一気に頬が熱を持ち、私は嬉しさと照れ臭さで俯いてしまう。
「困ったな……どうしたって俺は、もう君を愛しいと……」
俯く私よりずっと高い頭上から声が聞こえたような気がして私は顔を上げる。フランツ様の碧い瞳が、複雑な色で揺れているような気がした。
けれどすぐに笑顔になったフランツ様が私に手を差し出す。
「ニーナ。行こうか!」
普段通りのその笑みに、私は安心して頷いたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!