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ヴィントフェンスター伯爵 殿
ご息女である、ニーナ嬢を
私の妻に迎えたい
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アイスブルク辺境伯から送られてくるこの求婚状を、貴族達の間で「死の宣告」と呼んでいる。
三年前に二十三歳の若さで爵位を継いだ彼は、今年で二十六歳になる。
若い娘を娶っては加虐性癖で身も心もボロボロにして離縁をし、また新たな娘を娶る。すでに四回。そのうち三人は離縁後に自殺しており、残りの一人はまともに話せる状況ではないらしい。
「きっと今の暮らしがどれほど幸せだったか思い知る程、氷の死神から、それはそれは酷い仕打ちを受けるのでしょうね」
部屋の中でダンスのステップを舞いながら、アラベラが楽しげに話をする。アラベラにとって私は、何をしても許されるお人形だった。
「死神の魔力で、氷漬けにされてしまうかもしれないわね」
氷の死神。
辺境伯がそう呼ばれるには、もう一つ理由がある。
この国には、ごく稀に魔力を宿している者が存在した。
それは神に与えられた天賦の才で、左手の甲に魔力を示す紋章が刻まれる。辺境伯のその手には氷の紋章があり、手をかざして詠唱するだけで、恐ろしく巨大な氷の壁が現れる。この辺境伯の魔力をダイヤモンドヴァントと呼び、誰もが恐れを抱いていた。
豊かな土地と大きな湖、そして南から西側を海に囲まれたこの国は、作物がよく実り、海産物も豊富に獲れる非常に恵まれた土地だ。
その領土を奪おうと、陸続きの東側から周辺国が何度も侵略を試みてきた。けれどその度に、辺境伯のダイヤモンドヴァントがそれを死守してきた。この国の光と安寧は、代々アイスブルク家のこの力によって守られている。
氷の死神が若い妻を幾度と死に追いやろうとも、国王でさえ、それを咎める事は出来なかった。
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