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プロローグ
こちらへと近づくその靴音は、まるで死のカウントダウンのようだった。
見上げた視線の先に、息を飲むほどに美しい碧い瞳がある。
──氷の死神。
そう呼ばれる冷酷無慈悲な辺境伯。
私は目を逸らす事も、瞬きする事さえできずにその碧を見つめる。
けれど、冷たいはずのその瞳が優しく細められ薄い唇が穏やかな弧を描いたかと思うと……。私の眼前に、眩しい笑顔が広がっていた。
「ニーナ、今まで辛かっただろう。もう大丈夫だ」
これが、東側の広大な国境周辺を統べる国防の要。
フランツ・フォン・アイスブルク様と私の出会いでした。
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