第3話

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 オリヴィアは焦る。手首に激痛が走った。  ――転んだ拍子に手をついて手首を捻ってしまったのだ。  警察の怒声が迫る。 「そっちに逃げたぞ!」 「全員捕まえろ!」  オリヴィアは怖くなって、とっさに男に抱きつく。男は慌てながらも、オリヴィアの背中に手を添えた。  警察の靴音がオリヴィアたちに近づく。 「この辺で私娼の摘発をしております。身分証を……」 「……あ? 俺が私娼を買っていると言いたいのか?」 「……規則ですので」 「警察は間抜けになったんだな。俺が誰か分からねぇらしい」 「……! 失礼いたしました!」  オリヴィアは冷や汗をかいていた。耳元にまで心臓の音が聞こえる。  オリヴィアは私娼となって体を売る決意はしたものの、摘発されて母を悲しませることだけはしたくなかった。  彼女はぎゅっと目をつむる。  ――はやく、はやくどっか行って……!  警察が尋ねる。 「失礼ですが、そちらの女性は?」  警察は首を伸ばしてオリヴィアの顔をのぞき見しようとする。  男が答える。
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