第3話

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「連れだ。送り届ける途中だったんだ。見ての通り、いいとこのお嬢さんだ。お前らが大声出すから、怯えてしまった」  男はオリヴィアの背中をぽん、と叩く。警察はオリヴィアの足首まである黄色いワンピースを見ると、納得した顔で去っていった。  男が言う。 「ほら、もう大丈夫だ。嬢ちゃん、立てるか?」 「あ、ありがとうございます」 「こんな時間に、どこの貴族の子だ?」  オリヴィアは座り込んだまま、男をじっと見上げる。  男は筋肉があり、手足はすらりと伸びている。腹も出ていないし、前歯も清潔感もある。艶のある黒髪に、きれいな緑の瞳。おまけに、警察の摘発から守ってくれた。満点といってもいい。  オリヴィアは彼の手に右手を乗せて言った。 「あなた、私を買ってくれませんか」 「は?」  オリヴィアは真剣に言い募る。 「私を買ってください」  男は目を見開き、そして天を仰ぐ。 「嬢ちゃん、私娼だったのかよ……俺はてっきり……」  男はもごもごと何事かを言うが、オリヴィアはそれを無視した。 「はい私娼です。今日からですけど。買ってくれませんか」 「近頃の私娼ってのは、初心なふりをして男をだますのか?」
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